人工知能と聞いて活躍をイメージする分野と言えば、ロボット、製造などが主でしたが、最近は医療やスポーツなどのヘルス分野でも目覚ましいものがあります。
さて逆に、人工知能と最も遠そうな分野はどこかと考えてみたところ、「アート」「芸術」という分野がそうなのではないでしょうか。普段触れ合わない分、よく分らないものというイメージもあるでしょう。しかし、人工知能の勢いはそのようなイメージをはるかに凌駕しているのです。さらに発展は加速度的に進むことを考えると、私たちの未来は想像を超えたモノになっているかもしれません。

アートとは何か
真面目に論じようとすれば終わりのないテーマ設定になってしまいますが、多くの人の素直なイメージは「よく分らないもの」ともいえるのではないでしょうか。感性のみが生きる世界で、センスの無い人には理解のできないもの…。そのようなイメージを持つ人が多いように思えます。
ただ、世界を見渡すとアートはより身近なものであると思えるようになるでしょう。美術館の形態も分りやすい例です。日本の美術館はバリアブルで、作品にはロープが張ってあって近づけないシーンも浮かびます。そもそも、美術館に行かないとアートが感じられない。一方で海外であれば、道端にもアートがあふれている街も多いですね。美術館もとてもオープンです。生活の身近にアートがあるという感触をもっているように思えます。
さて、アートは感性のみに起因しているものなのでしょうか。実はアーティストには数理的センスが高い人材も多いと言われています。例えばデッサン力には、感性も大事だが図形的に物事をとらえる論理的スキルも必要だと言われています。決してアートは、感性のみで構成されているものではないのです。
人工知能とアートの関係
アートにも論理性が必要だとして、人工知能がその媒介になれるのでしょうか。
まず確実なことは、人工知能によってアート作品のレプリカを容易に作れるということです。作品の微細に渡る特徴をディープラーニングにより学習し、完全なコピーを創り出す。既に17世紀の画家の作品の完全なコピーに成功し、「テクノロジーとアートの結婚」と評価されています。
これはやはり、アートはある一定の論理性をもっても解釈ができる可能性を示唆いているでしょう。言い換えれば、アートとロジックはコインと裏と表のような存在なのかもしれません。この数年、多くのIT企業がデザイン企業を買収している動きもあるようです。デザインやアートというものの持つ力への期待がうかがえます。

人工知能はアーティストになれるのか
アートとしては「創造性」が不可欠と言えるでしょう。創造性を備えたアーティストに、人工知能はなれるのでしょうか。確実なことは、誰もその可能性を否定できないということです。むしろ、確実に人工知能はアーティストに近づいていると言えます。
既にGoogleなどが人工知能技術にかなり力を注いでいることは有名です。成果の賛否は分かれるようですが、既にGoogleは人工知能を駆使してコンピュータに絵を描かせ、人間の理解を超えた作品を完成させています。この作品自体は、人によっては評価し、人によっては恐怖するものですが、そもそもアートはその評価自体が揺れ動くものです。百年後に評価された画家の話も珍しくありませんね。
今わかっていることは、人工知能はディープラーニングによって自己学習が可能だということ、人工知能はディープラーニングによって芸術作品のコピーが可能だということ、ですね。人の理解は後からついてくることも多く、その点はコンピューターと人の大きな違いかもしれません。
人工知能がアーティストになれるかという問いは、人が何をどう評価するかという点に戻ってくるのかもしれませんね。