今後の医療を支える?!画像認識技術の発展
「画像認識」の技術は、ディープラーニングの導入で飛躍的に加速しました。2012年にGoogleのチームが発表した「Googleのネコ認識」という研究では、コンピュータが「ネコ」を自力で学習したことが話題になっています。このコンピュータには1000万枚の画像が使われたのですが、教師あり学習のような答えをラベル付けした画像ではなかったそうです。最後に認識したものに対して「それはネコというものですよ」と、その名前を教えてあげただけでした。
この発展した画像認識の技術は様々なことに応用されています。それは例えば「顔の画像をキーにしたセキュリティロックの解除」や、「ソフトのログインやスマホの起動の際に使われる指紋認証や虹彩認証」などです。
また、2016年11月には、中国の研究所が手書きの文字列を高い確率で認識する技術を開発したと発表しました。これによって手書きの文字を電子化する、ということも効率的に行えるようになるのです。
このように画像認識技術は私たちの暮らしに急速に浸透し、無くてはならないものとなりつつあるのです。
画像技術を医療に応用1~メラノーマの判別~
「メラノーマ」とは皮膚がんの一種で、皮膚の色素を作る細胞やほくろの細胞が「がん化」したものです。メラノーマは誰にでもあるほくろと見分けることが、微妙な症例もあるので難しいと言われているのですが、発展した画像認識技術によってこれを判別するシステムが作られました。
その試作品が紹介されたのは2016年10月で、筑波大学の皮膚科専門医がディープラーニングによる画像認識モデルを使って、メラノーマと良性のほくろの判別をその自信度とともに回答する、というものでした。
メラノーマと良性のほくろには形や色、大きさなどに違いがあり、丸くて境界がはっきりしていて均一な色のものが多い良性のほくろと、いびつで境界もはっきりせず、色も均一でないメラノーマをコンピュータが識別して判別するのです。ちなみにテストデータでは、測定精度が99%以上という優れた結果をたたき出しました。
画像技術を医療に応用2~がんの検出~
画像技術は「がんの検出」にも利用されています。アメリカの会社「Enlitic」が開発したシステムのがん検出率は、人間の放射線医師の検出率を上回っているとのことです。もちろん前述したネコの画像認識に比べても、がんの検出は難しいものです。例えばレントゲン画像の解像度、縦3000ドット×横2000ドットに対してがんのサイズは縦3ドット×横3ドット程度と、ごく小さいと言われています。
このAIにもディープラーニングが利用されており、あらかじめ準備された教師データ(解答がラベル付けされているデータ)を取り込むことで、がんの形状などの特徴や、どこに注目すればがんを判別できるかといったパターンを自動的に見つけ出すことができるようになっています。
まとめ
このように進化した「画像認識技術」は顔認識や指紋認証などだけではなく、医療分野の画像診断にも応用されています。ただし医療分野への応用には問題があり、「大量のデータの取得」が難しいそうです。ネコなどの画像はインターネットを介して大量に取得できるのと比べると、個人情報の絡みもあって難しいのでしょう。この解決には全国の医療機関などの協力が必要になってくると思われます。
また症状の説明には「オノマトペ」と呼ばれる「じんじん」、「ずきずき」といった擬態語が頻繁に使われます。これは病名の推測に非常に重要な情報ではあるのですが、コンピュータにそのニュアンスを伝えるのは、数値化しづらいことから非常に難しいものになっています。今後このような面も認識できるようになれば、より医療に役立つAIが開発されることでしょう。